正直に言って、安くなっていたから買ったというだけで、カードにはあまり期待していませんでした。通販のサイトに載っている画像は、「顔のカードである」ということくらいしかわからなかったし、たまにはこういう変わり種もあってもいいかもしれない、くらいのノリでした。
このデッキが、まさか、私にこんな衝撃を与えるなんて、あのころの私には、まったく想像していなかったんです。
デッキが到着して、箱を開けた瞬間から、「え、え?……え?」ってなりました。

とにかく、勢いと迫力がすごい。
大きめのカードいっぱいに「顔」が描かれているのですが、その顔がこちらを見ている。
カードを見ているというより、向こうからも見られているような感覚があります。
かわいいとか、美しいとか、癒やされるとか、そういう一般的なオラクルカードとは、かなり違います。むしろ、怖い感覚すらある。
そして、さらに特筆すべきは、このカードには、一般的なオラクルカードのような「このカードは○○を意味します」という解説が一切ありません。
大切なのは、意味を知ることではなく、ただただ、そこにいる存在と向き合うこと。
久しぶりに、ちょっとクラクラするカードとの出会いでした。
このカードをひとことで
言葉になる前の「何か」を、72の存在と向き合いながら受け取るオラクルカード。
カードごとの意味も、キーワードもありません。あるのは、こちらを見つめる「顔」だけ。
一瞬、怖い。でも、じっと見ていると、最初に感じた「怖さ」とは違うものが見えてくる。そして、何かを受け取ったとしても、それを言葉にするのがとても難しい。
「読む」というより、「向き合う」。
一般的なオラクルカードとはかなり違うところから、自分の深い部分に触れてくるようなデッキです。
基本情報
人間の顔という普遍的な言語を通して、自分自身と世界とのより深い関係を築きましょう。このデッキの画像は、古代の木々、山々、立石、寺院、大聖堂、そして多くの系統の人間の知恵の担い手たちの存在の中で20年間かけて制作された作品から選ばれています。それぞれの顔は独自の存在感を放っています。彼らを味方、自然の精霊、愛する人、あるいは微細な領域からの訪問者と考えてみてください。深く見つめ、これらの存在との関係を探求しましょう。
『PORTALS OF PRESENCE』裏面説明文より引用・翻訳
枚数: 72枚
ガイドブック: 36ページ
カードサイズ: 約11.4 × 15.2cm
作者: Deborah Koff-Chapin
20年以上描き続けた「存在」から生まれたカード
このカードの作者Deborah Koff-Chapinは、「Touch Drawing」という独自の方法によって作品を制作してきたアーティストです。

『PORTALS OF PRESENCE』に収録されている72枚は、20年以上にわたって生み出された数千点の作品から選ばれています。
一枚一枚を見ていると「このカードのために、この顔を描いた」という感じがあまりしません。
先に「存在」がいて、その中から72の存在がカードとして選ばれた。そんな印象があります。そして、この成り立ちは実際にカードと向き合ったときの感覚にも、かなり影響しているように思います。
とにかく、顔の迫力がすごい
72枚すべてに、異なる「存在」の顔が描かれています。カードサイズはかなり大きめ。手に取った瞬間から、普通のオラクルカードとは違う存在感があります。
ほとんどのカードに描かれているのは、人間とは言い切れないような顔です。

人のようでもある。神さまのようでもある。宇宙人のようにも見える。性別も、ほとんどわかりません。
しかもカード自体が大きいので、その顔がかなりの大きさで目の前に現れます。
箱を開けて最初に見たとき、
「夢に出そう……」
と思う方もいるかもしれません。
でも、きっと、もう夢の中ではこういう存在に出会っているんだろうな、そんなことも思いました。
「怖い」と思ったあとに、もう一度見る
72枚を見ていると、一瞬、「怖い」と思ってしまう顔があります。

でも、そこで見るのをやめずに、じっと眺めてみる。
すると、最初とは違うものが見えてきます。
怖いと思った顔が、よく見るとハートの形をしていたり。こちらに何かを伝えようとしているように感じたり。
少なくとも私は、そこから敵意や悪意のようなものは感じませんでした。
単純に、「自分が知っているものではない」から怖い。そんな感覚に近いのかもしれません。
もし宇宙人や神さまのような、自分の常識では捉えられない存在と本当に出会ったら、人はこういう「怖さ」を感じるのかもしれない。
そんなことまで考えました。

裏面は、ミステリアスなグルグル。なにかが誕生する前のカオスなのか、宇宙のイメージなのか、いずれにしても不思議と引き込まれます。
日本の仏像を思い出した一枚
中には、頭が割れ、その内側から別の存在が現れているように見えるカードもあります。

それを見たとき、私が思い出したのが、京都・西往寺に伝わる「宝誌和尚立像」です。

宝誌和尚の顔が裂け、その内側から十一面観音の姿が現れるという、非常に印象的な造形です。
もちろん、『PORTALS OF PRESENCE』がこの像をモチーフにしているという意味ではありません。
私がカードを見たときに、そこから連想したものです。
でも、ひとつの顔の内側から、別の存在が現れる、という表現が、まったく違う文化の中にも存在することがめちゃくちゃおもしろい!
カードの意味は、書かれていない
『PORTALS OF PRESENCE』には、カードごとの意味の解説がありません。

ガイドブック自体は36ページあります。

ただし、そこに書かれているのは「この顔は○○を意味します」といったカード別の解説ではなく、このデッキとどう向き合うのか、どのように扱うのかという話が中心です。
つまり、「このカードを引いたから、今日のメッセージは○○です」という使い方を、最初から想定していないのです。
意味を探すのではなく、存在と向き合う。そのとき、自分の中に何が起こるのかを見る。
このデッキでは、それ自体がリーディングなのだと思います。
実際に「今必要なメッセージ」で引いてみた
私も試しに「今の私に必要なメッセージ」として一枚引いてみました。

出てきたのは、ただ静かにこちらを見つめる、しっかりとした顔。
まず感じたのは「何もしなくていい。ただ、いるだけでいい」というような感覚でした。
でも、別にカードがそう言ったわけではありません。言葉は何も書いていません。ただ見つめ合っている。そうしているうちに、不思議な緊張感が走ってきました。手のひらに汗をかくような感覚まである。
さらにしばらく向き合っていると、自分の意識が、「果報は寝て待て、的な?」と、なんとなく言葉にまとめました。リーディングとしては、まあ、それでいいのかもしれません。
また、この不思議なことに、しばらくしてから見返すと、自分の顔を鏡でみたときのような、思い出すような感覚があります。「よくみたら似てるかな?」みたいな感覚です。
おそらく、このカードではそういう使い方で、なにかの存在と向き合いながら、それは自分ともつながっていくのでしょう。
言葉にする前に、もう受け取っている
普通のオラクルカードなら、一般的に、
カードを見る
↓
意味を読む
↓
理解する
という流れがあります。
でも『PORTALS OF PRESENCE』では、それより先に何かが起こる。
見つめる。緊張する。手に汗をかく。
なんとなく「何もしなくていい」と感じる。
そして最後に、頭が、言葉をなんとなく、まとめる。
言葉は、最後なんです。
だからこのデッキは、直接的な言葉としてメッセージをくれるというより、もっと深いところに先に響いてくるように感じます。
そこから何を受け取ったのか。それをあとから意識が言葉にしていく。そんな順番です。
人にリーディングするのは、かなり難しいと思う
その意味では、このデッキを使って誰かをリーディングするのは、かなり難しいと思います。
意味もキーワードもない。目の前にあるのは「顔」だけ。
そこから受け取ったものを、自分以外の人に伝わる言葉へ変換しなければなりません。
これは初心者だけの問題ではなく、ある程度カードに慣れている人でも、かなり力が必要なのではないでしょうか。
むしろこのデッキは「このカードは何を意味しますか?」ではなく、「この存在と向き合ったとき、自分の中で何が起きますか?」と使うほうが自然だと思います。
だから、誰かに答えを伝えるためのカードというより、まずは自分自身で受け取るためのカード。私はそんなふうに感じました。
初心者にはおすすめしない。でも、触れてほしい
オラクルカードを初めて買う人に「最初の一組はこれがいいですよ」とは、さすがに言いません。
何も書いていない。意味の解説もない。しかも顔しかない。
「で、どうすればいいの?」となる可能性はかなり高いです。
ただ、少し矛盾するようですが、こういうカードに初心者のうちから触れてみること自体は、とてもいいと思います。
カードリーディングを勉強していると、どうしても、「このカードの意味は?」「正しく読めている?」と、言葉や正解を探すようになります。
でも、本来その前に、「見たとき、自分の中で何が起こった?」というものがあります。
どのオラクルカードのガイドブックをみても、たいていは「解説はつけているけれど、自分で感じたことを大切にしてね」と書いてあります。だから、本来は、読み方の正解など存在しないんです。
怖い。落ち着く。なぜかわからないけれど気になる。胸がざわつく。ずっと見ていたい。
そういう、まだ言葉になっていないものを受け取る。
『PORTALS OF PRESENCE』は、その感覚をかなり強く意識させてくれるカードです。
カードは大きく、かなり扱いにくい
カードは約11.4×15.2cm。かなり大きいです。表面はツルツルとしたコーティングですが、サラサラ滑る感じではなく、カード同士は少しくっつきやすい。
紙もかなり薄めです。大きさもあるので、「折れてしまいそう」と少し心配になる感じがあります。
ただ、この薄さと大きさが、一枚一枚を「カード」というより写真やポートレートのように見せているところもあります。なので、このデッキに関しては、必ずしも厚くて高級感のあるカードだったらいいとも思いません。これはこれで、いい味があります。
ただ、問題はシャッフルです。大きいので、手の大き目の私でも、普通のシャッフルはかなり難しい。テーブルシャッフルでさえ、大きすぎてやりにくい。
私は少しずつ位置を入れ替えながら、混ぜるように扱っています。このカードは「シャッフルして、さっと一枚引く」というより、扱い方そのものから少し違います。
そして、とりあえず「この顔」が好き
72の存在の中には「これは好き」という顔も出てきます。理由はよくわかりません。

かわいい……のか?好み……なのか?そもそも何をもって好みなのか。
でも、こういう「なぜかわからないけれど、この顔が気になる」というところから始めるのも、このカードでは必要なのだと思います。
意味が先ではない。惹かれたという事実が先にある。
そこから何が出てくるのかを見ていくカードなのでしょう。
どんな人におすすめ?
『PORTALS OF PRESENCE』は、
- 一般的なオラクルカードでは物足りなくなってきた人
- 絵柄や象徴から感覚を受け取ることが好きな人
- 言葉になる前の感覚を大切にしたい人
- 自分自身と静かに向き合うためのカードを探している人
- 不思議なアートや、人外的な存在に惹かれる人
には、とてもおもしろいデッキだと思います。

反対に「質問に対する答えがほしい」「カードから具体的なメッセージがほしい」という方には、かなり使いにくいかもしれません。。
でも、そこがこのカードのおもしろいところです。
何も教えてくれない。ただ、そこにいる。
そして、こちらを見ている。
その存在と向き合ったとき、自分の中に何が起こるのか。
『PORTALS OF PRESENCE』は、カードから答えをもらうというより、そんな体験そのものを味わうための72枚なのだと思います。
慧樹の評価
読みやすさ ★☆☆☆☆
一般的な意味で「読む」ことを考えると、かなり難しいデッキです。キーワードもカード別解説もなく、受け取った感覚を言語化する力が求められます。
絵柄からの情報量 ★★★★★
ほぼ「顔」だけで構成されているにもかかわらず、見つめていると細かな形や表情、そこから連想されるものが次々と見えてきます。情報量というより、こちら側から引き出されるものが非常に多いカードです。感情が自然と沸き起こってきます。
象徴の深さ ★☆☆☆☆
意味を説明してくれないからこそ、自分が何を見て、何を連想し、何を感じたのかを深く考えることになります。ひとつの造形から文化や神話、宗教的なイメージまで連想が広がることもあります。深すぎて、応用が利かないので、1としました。
メッセージの具体性 ★☆☆☆☆
具体的な答えを受け取るためのデッキではありません。言葉になる以前の感覚を受け取り、必要であれば自分自身で言語化していくカードです。
初心者へのおすすめ度 ★☆☆☆☆
最初の一組としてはおすすめしません。ただし、カードの意味を覚える前に「自分は何を感じるのか」を意識する練習として、初心者のうちから触れてみる価値はあると思います。
※星の数はカードの優劣ではなく、このデッキの特徴を表すための目安です。

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